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住職のことば

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お葬式・法事は、仏教が伝わる場

お葬式・法事は、仏教が伝わる場

2023.05.17

お葬式・法事  ー仏教が伝わる場ー

先日の法事で、「葬式の意味が解らない。不必要だと思います」と、20代の男性が正直に言いました。周りの老人たちは、少し慌てて「とにかく大切」だと、取り繕っていました。
新型コロナ感染症が蔓延していた三年間に葬式は簡素化し、都会では通夜のない葬式や火葬だけが多くなったと聞きます。この辺りでも家族だけで葬式を過ごすことが増えました。縁の薄い親戚や隣り近所を本客として招くことは少なくなりました。
日頃の親戚付き合いや近所付き合いが少なくなり、関係性も薄くなりましたから合理的に変化したともいえましょう。
遺体の処理も、葬儀社がしてくれるので大丈夫です。
しかし、何か大事なことが抜け落ちてしまったようで淋しい、という声も聞こえてきます。
お葬式は、死んだ人を葬る儀式。しかし骨にして墓に納めて終わりでは、気持ちが納まらないのが人間なのでしょう。
法事の席で老人が「とにかく大切」と慌てたのも、そんな心からでしょう。

悲歎から回復するプロセス

「人は必ず死ぬ」と、誰もが解ってますが、身近な人となると受けとめられません。一年の内に長男と夫を亡くした女性が。「気持ちが追いついていかない」と悲歎していました。
「喪失体験に伴う『悲嘆のプロセス』ー大切なものを失う苦しさからの回復ー」という心療内科の医師の文章があります。そこに示されていたのは、①ショック②否認③パニック④怒り・敵意・うらみ⑤深い悲しみ⑥罪意識⑦孤独感と気分の落ち込みと無関心⑧あきらめ・受容・新しい自分への成長、の八段階でした。これを行きつ戻りつだんだんと回復していくのだそうです。

儀式の執行と法話

僧侶は、枕経から通夜・葬儀式・火葬・還骨勤行、そして初七日~七七日・納骨と、儀式を勤め法話します。
これらにより、まさに遺族の悲歎からの回復のプロセスに寄り添ってきたのでした。

仏教は、どんな教え?

「縁起の道理」、これが仏教です。すべてが相互に関係し、成るように成っており成って行く、と教えています。

どうにもならない現実

 一周忌の法事を勤めた時のことでした。
故人の末娘が一人だけで私を迎えましたので、理由を尋ねると「兄が病で急に入院し、姉の夫も大変な手術を受け退院したばかりなので来られなくなった」ということでした。

本願念仏の救い

お勤めをし法話が終わると、彼女が微笑み静かに語りました。
「一人での法事は淋しいです。頼りにしている兄ですから、毎日、回復して欲しいと祈っています。でも成るようにしか成りません」。
この言葉に、彼女が仏教を生きている証しを感じ、どうにもできない現実(縁起の道理}を念仏申し堂々と生きる真宗門徒の姿を見たのでした。

南無阿弥陀仏

宗教に、奇蹟を求めることはできません。

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